マッスルバックをやめたヤマハ
ヤマハのツアーモデルはこれまでマッスルバックアイアンでした。しかし、前作の020ツアーモデルからはハーフキャビティに変更。2021年に登場したVDアイアンツアーモデルに至ってはメーカーはハーフキャビティを自称しているものの、実際はフルキャビティと言って間違いない代物。
それでも34°のロフトに設定した軟鉄鍛造アイアンは、最高のフィーリングを上級者だけに向けて作った文字通り“ツアーモデル”。今回はその最新作ヤマハVDアイアンツアーモデルを試打評価していきます。
VDアイアンツアーモデルのデザイン
バックフェースはシンプルながらヤマハのコンセプトが現れたデザインになっています。
バックフェースの打点裏付近にはあみ模様のリブが施されており、余分な振動を抑制する働きがあるようです。
フレーム、リブ、RMXのロゴの3種類の肉厚が今回のVDツアーモデルの大きな特徴と言えそうです。ただこれは、三浦技研のヒット作TC-101アイアンに酷似していて既視感は否めません。
VDツアーモデル単体で見てもわかりにくいですが、フェース超は短め。ネック付近が膨らんだ“和顔”のアイアンです。
ソールの厚さはやや細く、シャープな抜けを演出しています。ダブルカットほどではありませんが、ソール後方が少し削り落とされたようなデザインになっています。
VDツアーモデルのフレームはトゥ側にボリュームがあり、長いネックと相まって左右への重量配分を考慮した形状。
フェース厚は何の変哲もなくシンプル。
試打データ
ヘッドスピード | 47.0m/s |
ボールスピード | 59.3m/s |
平均キャリー | 177y |
平均トータル | 184y |
平均サイドスピン | 496rpmフェード |
平均バックスピン | 7786rpm |
平均打ち出し角 | -4.0° |
平均打ち上げ角 | 21.1° |
最大の高さ | 47y |
落下角度 | 53° |
左右ブレ | -5y |
VDツアーモデルの最大の強みはこの試打データだと思います。こうした単純な削り出しのモデルでは性能をシャフトに担保させる場合が多いのですが、2021年モデルのヤマハのVDツアーモデルはヘッドの性能が抜群に良いです。
平均キャリーは177yで、ロフト34°であることを考慮するとよく飛んでいます。それに加えてバックスピン量は7808rpmとこれまた高水準です。未だかつてここまでスピンと飛距離のバランスに長けたアイアンは存在しなかったのではないでしょうか。
シャフトはダイナミックゴールドツアーイシューEXのS200です。私の苦手なシャフトでここまで良い試打データが取れるとは思いませんでした。
VDツアーモデルがここまでのスピンバランスになったのには理由があります。それは打ち上げ角度が小さいということです。インパクトロフトが立っているわけですが、これによって初速が上がります。さらに、このインパクトになるのにはダウンブローも強く入る必要があるためそれすらヘッドで誘発しているということになります。
フェード回転がある程度かかっているにもかかわらず曲がりはばが小さいのも、バックスピンがかかっているのに飛距離がしっかりと出ているのも全てこのインパクトロフトによってもたらされた恩恵ということです。
ヤマハVDツアーモデルの魅力
試打データが良いだけなら、他にもあります。しかし、2021年のヤマハVDツアーモデルの良さはそれだけではありません。打感です。
昨今のハイテクアイアンは樹脂などを駆使して打感を極めつつありますが、それでも結局は「作られた打感」。それに対してVDツアーモデルはガチの鍛造。ボディが鍛造とかそういうこじつけの鍛造ではありません。
打感はこれでもかと言うくらいピュアでリニア。焼きなましをしているのでミズノのアイアンと似た感触になっていますが、VDツアーモデルの方が簡単に芯を捉えられるように思います。今年のアスリート系モデルではT100アイアンを評価しましたが、正直ヤマハVDツアーモデルの方が上です。打感も、試打データも。
誰に向いているか
実は2021年モデルのVDアイアンシリーズはプロの感触も良いらしく、今平選手もVDツアーモデルへのシフトを決めているようです。必ず最新モデルにシフトする選手ではありませんから、ここからも上級者にウケる仕様になっていることが理解できるでしょう。
今回の試打データを見てもらって分かる通り、ネックは弾道の高さになると思います。ダイナミックゴールドという重いシャフトで打ったとはいえ角度が出にくいので、そもそも高弾道な人である必要があります。
逆に高さは出さなくても良いのであれば、4°以上の大きいダウンブローでインパクトする人も候補に挙げていただきたいです。
データチャート
非常に評価は高いです。フィーリングは間違いなく今年一番ですし、試打データも合わせると過去のモデルと比較してもトップ3に入りそうな優秀なものでした。
ヤマハVDツアーモデルは、モデル名を変えて登場したやる気を感じられる完成度の高いアイアンです。
総合評価
間違いなく買いのアイアンです。
感動するほどフィーリングが良く、性能も抜群。本当に試打しないのは損です。ただ、今回のVDシリーズから、ヤマハも忌々しい「セレクトストア制度」を始めました。案の定VDツアーモデルもそのリストに入っています。
ネットでの販売をせず、ある程度規模の大きい店舗のみでの取り扱いとなるようなので、事前に確認してから試打に行くことをおススメします。
おススメ度
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