中空充填剤の走り
テーラーメイドは今となっては当たり前に思える構造やテクノロジーを世に提供してきたブランドです。その中でもP700シリーズの中空構造に充填剤を入れたスタイルは他のブランドにも影響を与えました。
今回特集するのはP770アイアンの2023年モデルです。7番のロフト33°のアスリート系モデルで、ライバルはi230などだと思います。なんとi230と発売日を被せてきていて、テーラーメイドの意気込みを感じます。
テーラーメイドP770(2023)の概要
P770(2023)アイアンは3番からPWまでのラインナップで、PWは45°です。ロフトピッチも普通なので比較的距離のフローはつけやすいと思います。
ヘッド素材やフェース素材を見てもらうと、軟鉄“鋳造”のフェースが今回の推しのポイントであることが分かります。打感が良くなるとか言っていますが、素材よりも構造(フェース厚)や製法の方が重要なので軟鉄鋳造は打感の良さを示すことにはならないと私は思います。しかも8620カーボンスチールだし。
タイトリスト同様ライ角が少しアップライトなので左に飛ぶ場合はライ角調整も視野に入れましょう。
P770(2023)アイアンのデザイン
2023年モデルのP770アイアンはブラッシュドスチール仕上げとクロームの組み合わせになっています。今回同時発売のP7MCやP7MBも同様です。
前作よりも高級感が増してさらにカッコ良くなりました。テーラーのデザイナーって分かってますよね。
ソールには貫通型スピードポケットがあります。ソール幅はやや狭くて割とストレートな形状だと思います。
ブレード厚は前作と同じくらいですね。薄めでこれもカッコよさの要因です。
構えるとトゥ側の丸みが増したように感じました。P770(2023)アイアンはフェース長が770mmなのでP770というネーミングになっていますから、全体的にP790をよりコンパクトにしたヘッドです。
試打データ
P770(2023)アイアン7番×ダイナミックゴールドS200
ヘッドスピード | 45.4m/s |
ボールスピード | 59.2m/s |
平均キャリー | 180y |
平均トータル | 190y |
平均サイドスピン | 938rpmドロー |
平均バックスピン | 5979rpm |
平均打ち出し角 | -1.3° |
平均打ち上げ角 | 24.8° |
最大の高さ | 53y |
落下角度 | 55° |
左右ブレ | -22y |
ダイナミックゴールドでは適度なスピンと飛距離のバランスが良い試打データとなりました。ハイテクアイアンらしく初速も33°としてはかなり出ているので評価したいところです。
ただこの試打データ、前作とほとんど同じなんです。初速もスピン量も飛距離も大体同じ。つまり性能的な進化はほとんどしていないということになります。まぁアイアンが必ずしも進化しなければならないという考えを私は持っていないのでこれだけで評価を下げることはありませんが、前作と2023年モデルを悩んでいるのであれば検討の材料になるかもしれません。
P770(2023)アイアン7番×ディアマナTHUMP95S
今回から新たに純正シャフトに加えられた高剛性カーボンシャフトです。カーボンとしては重い90g台です。
ヘッドスピード | 45.4m/s |
ボールスピード | 57.3m/s |
平均キャリー | 173y |
平均トータル | 183y |
平均サイドスピン | 765rpmドロー |
平均バックスピン | 5876rpm |
平均打ち出し角 | 1.5° |
平均打ち上げ角 | 26.5° |
最大の高さ | 53y |
落下角度 | 55° |
左右ブレ | -9y |
カーボンの通説としては初速が出たり、ドローが打ちやすくなったり色々なパターンがありますが、初速は落ちました。単純にP770(2023)アイアンのヘッドとの相性があまり良くないのだと思います。
結果的にスピンも飛距離もガクッと落ちてしまいました。もし軽量なシャフトで組みたいのであってもスチールの方が私としてはおススメです。
P770(2023)アイアンの打感
今作のトピックであるL字形のフェースパーツですが、既にONOFF KUROなどで採用されているので新鮮味はありません。
P770(2023)アイアンの打感は前作とそこまで大きな違いはないかと思います。P790ほど良くはないです。打感が良い部類には入らず、系統としては硬めです。
トゥヒットの打点のミスでは少し外しただけでもかなり手に衝撃が走りますので快適な打感とは程遠いと思いました。ただ、弾道は変わらないので打感を犠牲に曲がりを抑えているような印象を受けます。これが良いかどうかはあなたの価値観に任せます。
P770(2023)アイアンのイマイチな点
正直言うとアップライトで打ちにくいです。打点が下がりやすく、それによってショートする高スピン低初速弾道が出るのですが実際の芝でも出そうな感じがして嫌でした。
ライ角はかなり重要だと考えているのでこの辺りは調整することをおススメします。全ての根幹はここにあると考えているので、ライ角を整えてあげれば評価も変わるでしょう。
データチャート
安定性は評価していますが、それが寛容なのかと言われると疑問です。打感の傾向など、感触として受け入れられる寛容性ではなくデータをもとに評価をした寛容性です。実際に試打してみないとこの辺りは感じられないと思います。全体としては凡で、前作で既に完成していただけに新鮮味が少なく改めて高評価するほどの完成度ではないと考えます。
総合評価
デザインのかっこよさやロフト体系の良さはコンセプトの時点で決まっていることであり、この製品の良さではありません。2023年モデルのライバルであるi230と比べれば試打データでは互角ですが、魅力とシャフトへの反応、ミスへの反応で圧倒的にi230の方が良いアイアンだと思います。
おススメ度 (2 / 5)
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