進化を求められない希少種
今回はタイトリストの軟鉄鍛造アイアンシリーズの最新モデル、620CBと620MBを比較しながら評価していこうと思います。
アメリカ仕様では、620CBも620MBも7番のロフトが35°で同じなのですが、日本仕様はCBだけ1°ストロングの34°にしてあります。
まぁその1°で飛距離が格段に変わることはありませんが、メーカーとしては少しでも易しく見せようとしているのかもしれませんし、他のメーカーと対抗できるようにしている可能性もあります。
どちらにせよ、飛距離を求める人は使いませんし使いこなせませんのでそれを前提として評価します。
クラシックロフト、軟鉄鍛造、高密度ヘッドの三拍子そろった上級者向けアイアン、620CB&MBはどんなアイアンに仕上がっているのか試打データから見ていきましょう。
試打データ
620CB
ヘッドスピード | 47.0m/s |
平均キャリー | 162y |
平均トータル | 169y |
平均サイドスピン | 117rpmドロー |
平均バックスピン | 8065rpm |
平均打ち出し角 | 0.9 |
平均打ち上げ角 | 22.5° |
左右ブレ | 1y |
シャフトはトゥルーテンパーのAMTホワイトS200です。
ウェイトフローのシャフトですが、7番での重さや硬さは普通のダイナミックゴールドとほとんど同じです。
バックスピン性能が非常に高いです。
620CBはタイトリストのキャビティバックアイアンの伝統に従ったタングステン内蔵のヘッドです。このモデルでは、3番4番にタングステンを内蔵して高弾道化を狙っています。
逆に言うとそれ以外の番手は自分で上げてください、という意味でもあります。ただ、試打データから分かるようにそこまで心配しなくても上がると思います。
620CBを使う人はロングアイアンまで入れる人も少なくないと思うので、適当に設計せず配慮されているのが分かりますね。
おそらくプロからの要望なんだと思います。
試打していてもアマチュアが使うにはやけにヘッドがクルクル動くし、頑張ってロフトを立ててもバックフェースをくりぬいて低重心化しているために超高弾道になってしまいます。
CBだから易しいということは620シリーズには当てはまりませんので注意してください。
最高飛距離は、キャリーで163y、ブレ幅は縦3y、横8yです。使いこなせているかは不明。
前作のCBはこちら。

620MB
ヘッドスピード | 46.1m/s |
平均キャリー | 168y |
平均トータル | 179y |
平均サイドスピン | 621rpmドロー |
平均バックスピン | 5682rpm |
平均打ち出し角 | 1.6 |
平均打ち上げ角 | 23.2° |
左右ブレ | -5y |
シャフトは全く同じ。
驚くべきことに、35°であるMBの方が飛びました。
平均打ち上げ角はロフト通りMBが1°高いので、要因はスピン量だと考えられます。
単一素材削り出しのマッスルバックである620MBは、重心が高めになっているハズですから、バックスピンはかかりにくいです。
それがうまく作用して、低めの弾道、少なめのバックスピンになり飛距離が少し伸びたのでしょう。
試打している時の手ごたえでは、捕まるのが最も印象的でした。
ブレ幅は縦5y、横11yです。まぁ私程度のスイングではこのくらいにしかまとめられませんが、片手シングルやスクラッチプレーヤーなら打ちこなせるのかもしれませんね。
試打計測ではキャリー172yが最高でした。試打している中で175y程度なら少しドロー強めで打てば届きましたので、多少前後させて打つことは難しくありません。
前作のMBはこちら。

ビジュアルで見る弾道
見づらいですが、黄色が620MB、白がCBです。
こうしてみると弾道の差が良く分かりますね。
弾道の頂点が黄色のMBの方が低く遠くにあります。この弾道の伸び方だと、MBで3番アイアンや4番アイアンを入れるのはやや不安な感じがします。
実は、タイトリストの2019年モデルのアイアンは全て6番からのセットです。これが絶妙に効いてくるのが620シリーズでしょう。
度数の差が少ないことと、先に述べたように620CBは3、4番にタングステンを内蔵して低重心化を図っていることがその要因です。
MBでセットを組む場合、ロングアイアンでは弾道が上がりにくく飛距離を安定させるのに苦労します。そこでキャビティバックとのコンボがチラついてくるわけです。
しかも、620CBの試打データから分かるように、バックスピンがかなりかかって飛びません。でも、ロフトは1°ストロングになっていますから飛距離のフローが崩れにくいのです。
まさに、コンボを組めと言わんばかりの度数、重心設計なのです。
これはもしかしたら私の深読みなのかもしれませんが、タイトリストですからその可能性は高いでしょう。
620シリーズのかっこいいとこを紹介
これね。
なんかかっこいい(笑)
それだけ…
次はこれ。620MBのバックフェースのデザイン。前作は左下にMBの文字が配置されていましたが、620になってそれを取っ払ったシンプルなものに変更してきました。
今度はCB。バックフェースには716と違ってタングステンの文字はありません。その分なのか“Titleist”の文字のところが少し肉厚にされています。
620シリーズは表面がサテン仕上げになりました。前作のテカテカなのと比べると高級感が増したように関します。おかげでピンぼけしまくりで大変でしたが(笑)
私が大好きなマッスルバック、オノフMB247Dも同じ仕上げです。
620CB&MBを比較
上がCB、下がMBです。ヘッドサイズに大きな差はありませんが、フェースプログレっションに違いがあるのが見て取れます。
CBがややグースなのに対し、MBはかなりキレイなストレート。これにより、フェースのヒール側の膨らみが変わるのでCBの方が大きく見えました。
同じく上がCB、下がMBです。
こうしてみるとMBのソールの薄さは明らかですね。数値をまだ手に入れていませんが、いつも通りならバウンスを5°ほどつけているハズです。
データチャート
はじめに言った通り、飛距離を求めるべきアイアンでないのは大前提としてますので、飛距離の評価はもちろん低いです。
ですから、試打計測でトラックマンやGC2を使ってキャリー140出せない方にはお勧めできません。
ただ、それさえクリアしてしまえば、絶大なスピン量とコントロールする楽しさを享受できると私は考えています。
さらに、コスパにおいても高評価しました。
6番までのセットであるメリットは620シリーズが最大でしょう。コンボアイアンで3番まで入れてみて欲しいです。
総評
上級者向けとしてはかなり良くできたアイアンだと思います。
まず、620MBに関しては捕まりが向上して飛距離が伸びたこと、それによりマッスルバック本来の良さが増したように思います。
シャフトとの組み合わせは特に気にしていませんが、あまりにも柔らかいと捕まりすぎる可能性があるので慎重になった方がいいです。
次に620CBです。前作で私が酷評した飛距離とバックスピンのバランスが改善されていました。本当に細かい数値ではありますが、飛距離をほぼ変えずにバックスピンを増したのはさすがです。
名前を変えただけに、明確な進化を果たしていると感じました。
どちらも易しくはありません。そのうえで上級者に対してなら相当おススメしたいです。この手のアイアンでは珍しくモデルチェンジで改善点が分かるくらいにあったのは評価したいところ。
ぜひ、試打だけでもチャレンジしてみてください。
おススメ度









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