二年に一度のモデルチェンジ
日本のゴルフ業界で最も売れるクラブがゼクシオシリーズです。
初代ゼクシオの登場から20年が経ち、2020年モデルはゼクシオ11(イレブン)とゼクシオX(エックス)という名前で登場します。ロゴも一新されこれまでよりも若い客層をターゲットに取り込みたいようですね。
ここ数年のゼクシオシリーズはやたら軽量化に凝っていて、前作ゼクシオテンは総重量270gとなりました。これまでゼクシオプライムが設定されていた重量帯に食い込んでいたわけです。
さて、2020年モデルのゼクシオは二種類になるわけですが、違いがイマイチ分かりにくいかもしれませんので、くどいくらいに詳しく説明したいと思います。
ゼクシオ11ドライバーのコンセプト
私は効率主義なので、詳しくと言っても重要な所だけまとめます。
簡単に言うとゼクシオ11は…
これまでのゼクシオの後継モデル
です。
総重量はゼクシオ8と同じくらいで280g前後。スペックは以下の通りです。
トピックは3点あります。
ゼクシオ11の注目ポイント①カウンターウェイト
簡単に言うとグリップの内部にウェイトを仕込んでカウンターバランスっぽくしているのです。
バランスがD3です。D0神話が崩れましたね。
カウンターバランスとは、クラブの両端に重量を持たせることでヘッドの動きを最適化するための手法です。
実は、私のドライバーやロングアイアンはグリップエンドに鉛(10gくらい)を貼ってカウンターバランスにしています。ゼクシオ11には10g、ゼクシオXには6g装着されています。
パターもカウンターバランスにしているくらい信者です(笑)
どういうメリットがあるかというと、同じスイングプレーンに乗せやすいことです。
身をもって体感しているのでこれは間違いありません。
ゼクシオは前作の10でも同じ軌道に乗せるための策を講じていました。それをゼクシオ11ではカウンターバランスで解決しようと試みたのでしょう。
正直、カウンターバランスは博打で、万人受けするとは思っていません。
もともと捕まるクラブなのでピーキーになりやすいデメリットが考えられるからです。そのあたりは試打データで確認してみてください。
ゼクシオ11の注目ポイント②フェース
フェース中央部を薄肉化したのです。
どこかで聞いたことがありますね。はい、これはキャロウェイが開発したフラッシュフェースと同じ構造です。
もはや、エピックフラッシュより後に発売されるモデルはほぼ例外なくフェース中央が薄くなっています。
ゴルフクラブの新常識になったわけですね。ゼクシオ11も例によってこれを採用してきたのです。
ゼクシオ11の注目ポイント③重量配分
ソールとクラウンも薄肉化して、重量配分の自由度を手に入れました。
ただ、私はこれにはやや懐疑的です。
総重量が増していて、カウンターウェイトを装着しているのでバランスを考慮するとヘッド重量自体は重くなっているハズです。
それで薄肉化しても、全体としては軽量化されていないと思うのです。配分を変える程度ではゼクシオが対象とするアベレージゴルファーでは違いを感じないでしょう。
ゼクシオXドライバーのコンセプト
ゼクシオX(エックスと読みます)は今作から新しくラインナップ、ということになっています。
が、私が思うに実態は…
ゼクシオミヤザキモデルの後継
です。
なにせ重量帯が同じですから。もちろんテクノロジー的にはゼクシオ10のようにただシャフトを変えただけではないので進化はしています。
ゼクシオ11と共通のところは省略します。
ゼクシオXの注目ポイント①素材
既に画像を見た方も多いでしょうからそれを前提にお話しします。
見て分かる通りカーボンコンポジットをソール部分に組み込んでいます。
これまで、チタン特有の甲高い音と打感を売りにしていたので採用してこなかったのですがゼクシオXになりようやく採用されました。
前々から予想していたので、ようやくかといった印象です。フルチタンと比較して重量配分に自由度があるので、好きなところにウェイトを配置できます。
まぁ、この程度の面積をカーボンにしたところでアマチュアが打ってわかるくらい抜本的に重量配分が変わるとも思えませんが…
しかも、クラウンはこれまで通りチタンなので、打音が少し静かになったくらいです。
ゼクシオXの注目ポイント②フェース角
ずばりストレートネックになっています。
前作までのミヤザキモデルでもフェース角はフックのままだったので大きな変更点と言えます。
メーカーによると、0.5°オープンなのですが、実際見るとほぼストレートです。
ただ、ここまでするともはやZ585とキャラがかぶってくるように思えます。もちろんZ585はカーボンクラウンなのでコンセプトがそもそも違うわけですが、重量帯が同じです。
試打データ
ゼクシオ11 9.5° 純正シャフト(S)
ヘッドスピード | 53.1m/s |
平均キャリー | 291y |
平均トータル | 312y |
平均サイドスピン | 176rpmドロー |
平均バックスピン | 2507rpm |
平均打ち出し角 | -1.0° |
平均打ち上げ角 | 15.8° |
最大の高さ | 49y |
落下角度 | 45° |
左右ブレ | -18y |
いやぁ、驚きました…
正直、ゼクシオ11は目立った革新が無かったので前作とたいして差はないだろうと予想していました。
しかし、一球打った瞬間に違いを感じました。
いままで「オートマチック」と表現していたことが何だったのか、疑問になってきました。
最高飛距離は一発目のキャリー298y、トータル323yでした。
フックフェースですが、打ち出し角は穏やかでした。これが前作のゼクシオ10との一つ目の違いです。
試しにゼクシオ10を打ってみたら、平均で-3.0°でした。サイドスピンも600rpmを超えるほどの捕まりを見せます。
一方で、ゼクシオ11のサイドスピンは感動するほど少ないです。
113rpmから341rpmの間に収まり、ブレ幅も左に28yが最大でそれ以上は曲がりませんでした。
今回は10球ほど色々な打ち方で打ったのですが引っ掛けが少なかったのも印象的です。これが2つ目の違いです。
どうしても、カウンターウェイトが入っていてフックフェースだと理論上引っ掛けを防ぐのは難しいです。
それでも、引っ掛けることはなくきれいなドローを安定して打つことが可能。
ゼクシオ11とゼクシオ10の3つ目の違いはバックスピンです。もともと打ち上げ角で弾道の高さを出すタイプだと思っていたので前作でもバックスピンはそこまで多くありませんでした。
それでも、今作ゼクシオ11は2500rpm程の理想的な数字に集まり結果として高い飛距離性能につながったのだと考えられます。
ゼクシオX 9.5°純正ミヤザキシャフト(S)
ヘッドスピード | 54.1m/s |
平均キャリー | 281y |
平均トータル | 299y |
平均サイドスピン | 705rpmドロー |
平均バックスピン | 2936rpm |
平均打ち出し角 | -1.3° |
平均打ち上げ角 | 16.0° |
最大の高さ | 52y |
落下角度 | 48° |
左右ブレ | -47y |
こちらは若干期待外れでした。
つや消し。
見た目もすっきりしてかっこいいのですが、ドローバイアスが強くやや大きく左に曲がってしまいます。
最大飛距離はキャリー282yで、トータル300y。安定感は抜群でした。
到達点は左38yから55yの20y弱のブレ幅に収まっています。サイドスピン、打ち上げ角もほとんど変わらず同じような弾道がいくらでも打てるクラブです。
シャフトのフィーリングは前作のミヤザキシャフトの方が好きですね。
ヘッドスピードは速かったですね。この重量にして平均54m/s、平均初速も75.2m/sと優秀な数字です。
打感については後述します。
ゼクシオX 9.5°スピーダー569エボリューションⅥ(S)
ヘッドスピード | 52.3m/s |
平均キャリー | 283y |
平均トータル | 304y |
平均サイドスピン | 731rpmドロー |
平均バックスピン | 2348rpm |
平均打ち出し角 | -0.9° |
平均打ち上げ角 | 16.0° |
最大の高さ | 46y |
落下角度 | 44° |
左右ブレ | -52y |
試打できるスペックとして用意されているのは、スピーダーエボⅥでした。
この組み合わせにするとヘッドの特性が良く分かります。
私個人的には、カスタムベースのヘッドとしての方が有効な使い方なのではないかと思います。
ゼクシオXはヘッド重量が198gで重いのでカスタムの50g台でちょうどいい剛性感です。
最大飛距離はキャリーで286y、トータル308yでした。
平均して左に50yほど曲がってしまうのですが、バックスピンは少なく、打ち出し角打ち上げ角ともに安定しているので微調整でかなり使えるドライバーになることは間違いありません。
私のヘッドスピードなら661の方が結果が良くなるでしょうね。
カスタムモデルだけはゴルフプライドのグリップが装着されています。カウンターウェイトは入っているのでしょうか…
ビジュアルで見る弾道
見えにくいですが青がゼクシオ11、白がゼクシオX、黄色がゼクシオXのスピーダーです。弾道の高さ自体は黄色だけ低いもののそれ以外は同じくらいです。
横から見るとゼクシオX(白)の安定感がお判りいただけると思います。
そして、青のゼクシオ11の弾道の伸びが素晴らしいです。キャリーでよく飛んでいるので環境を選ばずに飛距離を期待できます。
ゼクシオ11とゼクシオX、何が違う?
共通点の方が少ないです。
同じなのは、角度やスピン量のブレの少なさと打音くらいでそれ以外は全て違います。
メーカーは対象ユーザーをゼクシオ11はヘッドスピード40m/s以下、ゼクシオXはヘッドスピード43m/s前後と設定しています。
しかし、バックスピン量を見ると決してそんなことはなく、捕まり具合で判断した方が良いと私は考えます。
感じる部分では、グリップの太さに大きな違いがあります。
ゼクシオ11のグリップの方がゼクシオXのグリップよりも太いのです。
これは振り心地に大きく影響しますので是非確かめて頂きたいです。はっきり言うとゼクシオXのグリップが細すぎます。
シャフトの太さなのか、グリップの厚さの違いなのか厳密には分かりませんのでグリップを交換して済むかも不明です。
また、フェース角も見て分かる違いでしょう。
こうして画像で見るとゼクシオ11のフェースもそこまでフックフェースだとは思えませんが、しっかりフックですので安心してください(笑)
ゼクシオXはグレーのヘッドでスクエアフェース。なんとなくホンマのドライバーと色合いが似ていますね。
ゼクシオXの顔はミズノなどと同じで、ネック側にやや膨らみのあるフェースです。
購入に当たっての注意点
まずはグリップです。
これがゼクシオ11の純正グリップ。エンドにウェイトプラスって書いてますね。
グリップは軽量モデルでなおかつ口径が大きめなので、グリップ交換の際は基本的にはゼクシオの純正のものにしてください。
グリップをもっと良いのに交換したいかたは、重量に気を付けて選んでください。口径に関しては、頑張れば入れられるのできにしなくても良いのですが、重さだけはメーカーの設計意図に逆らうことになるので守るようにしてください。
こちらがゼクシオXのグリップ。
また、単品販売はしないとのことですが、カウンターウェイトが外れるもしくはズレる可能性があります。その場合は必ずショップに行ってください。
ゼクシオの修理は他のクラブに比べてデリケート(リシャフトも含む)で、ある意味特殊なので自分で出来そうでもメーカーの修理に出しましょう。
筆者が個人的に感動した点
打感です。
カップフェースになり打感がまるで別物になりました。
ホンマのTW747のカップフェースと似た打感です。ボールがめり込んでいるのかと思うくらいボールとフェースがグリップします。
こうして見るとゼクシオXはディープっぽくなってますね。
音はゼクシオなのに、打感はホンマみたい。
トピックは再現性の高さ
ありきたりな記事になるのも嫌なのですが、これだけは伝えなければならないだろうなと感じます。
自分自身、カウンターバランスのクラブを使っていることもあり、今回のチューニングには期待していました。期待を超えてきたことは素直に評価したいです。
しかも、バランスを崩すことなく作ったのがまたすごい。
私はバランスを気にすることはありませんが、「万人受け」を狙うメーカーとしてはそれは出来ないのでしょう。
バランスを通常のものと同じにしてもしっかりとカウンターウェイトの効果が表れていますので、感動しました。
データを見ても打ち上げ角だけが揃ったり、スピン量が揃ったりすることはあるのですが、全てが揃うのは初めて見ました。
データチャート
ゼクシオ11
非常に悔しいですが、超高評価です。飛距離が出るかがおそらく生命線になったでしょう。
ヘッドスピードが遅い人向けのクラブを、私のようにヘッドスピードが以上に高い人が打っても良い試打データが計測されてしまうのは皆さんが思っている以上にすごいことです。
ゼクシオ11はこれまでのゼクシオの後継という位置づけですが、確実にゲームチェンジャーとなるモデルだと思います。
ゼクシオX
ゼクシオXの評価は安定感の良さに尽きるでしょうね。
絶対的な飛距離では、分かりませんがヘッドスピードは上がるので、スイングタイプとフィットすれば飛距離も期待できると思います。
また、ゼクシオXはカスタムベースとしての可能性を感じたので、曲がらないクラブを作りたいのであれば是非お勧めしたいです。
総評
是非試打してほしいです。
偏見を持たず、両方のタイプを試打してもらいたいと考えています。
両方にそれぞれ強みがありますし、安定性や扱いやすさなどの共通した性能の高さがあるのも事実。
総合力の高いクラブだと結論付けることとします。
おススメ度
ゼクシオ11
ゼクシオX





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