また“2”かよ!
テーラーメイドの開発に対するエネルギーは大変素晴らしいと思うのですが、ネーミングについてはちょっとどうかと思っています。
これまでも2016年モデルと2017年モデルが同じM1&M2という名前のドライバーを出しました。その後もSIMとSIM2などネーミングがややこしいモデルが続いています。もちろん名前を変えるということには大きな意味があることはこのサイトで何度も言っていることですからそれを否定することはしませんが、もう少しわかりやすくしてもらわないと、記事を書いたり使っているクラブの相談を受けるときに手間がかかります。
2023年モデルのテーラーメイドはステルスの後継モデルということでステルス2というシリーズになりました。この記事ではステルス2シリーズの中でも中間的なステルス2(無印)を試打評価していきます。
ステルス2ドライバーのデザイン
ステルス2がステルスから特別革新的な機能を追加されたわけではありません。モデル名が継承されているというのはそういうことですから。
あくまでバージョン違いのステルスと思うのが順当でしょう。ステルス2ドライバーのコンセプトは“FAR GIVENESS”で、これはおそらく寛容性を表すForgivenessと“さらなる”という意味のFARを合わせた造語です。要するにステルス2は寛容性を高めたステルスということ。
確かにステルスドライバーに寛容性という概念はありませんのでステルス2が進化しうるのはそこだというのは納得です。
ステルス2ドライバーのフェースは基本的にステルスと同じです。気持ちフェース上部のカーブがより丸みを増したように見えます。
ステルス2ドライバーのデザイン的な特徴は、イナーシャジェネレーターがSIMのように鋭くなったことだと思います。ステルス2ドライバーの座りの良さは間違いなく良いです。
トゥ側から見ると、結構分厚い。特にお尻の高さが目立ちますね。イナーシャジェネレーター先端のテカテカのウェイトが前よりも張り出しています。
試打データ
ステルス2ドライバー9°×純正テンセイS
ヘッドスピード | 52.6m/s |
ボールスピード | 75.6m/s |
平均キャリー | 308y |
平均トータル | 333y |
平均サイドスピン | 330rpmドロー |
平均バックスピン | 1988rpm |
平均打ち出し角 | 0.1° |
平均打ち上げ角 | 15.5° |
最大の高さ | 44y |
落下角度 | 41° |
左右ブレ | -25y |
まずはステルス2ドライバーの純正シャフトでの試打データを見ていきます。平均初速は比較的平凡な75.6m/sで、キャリーは308yでした。前作の試打データはドロップショットで機械計測上は良い数値でしたが信頼できるデータでもありませんのでステルス2ドライバーの方が現実に近いかなと思います。
バックスピン量は相変わらず少ないです。それでも前作よりも適正値に近いので改善された感じはかなりあります。弾道の高さもそれに伴って低めになりました。角度については詳しく後述します。
最高飛距離はキャリーで314yで、トータル341yです。飛距離性能は優秀ですが前作やSIM2と比べて秀でているわけではありません。
ステルス2ドライバー9°×ベンタスTRレッド6S
ヘッドスピード | 52.9m/s |
ボールスピード | 74.8m/s |
平均キャリー | 304y |
平均トータル | 328y |
平均サイドスピン | 372rpmフェード |
平均バックスピン | 2003rpm |
平均打ち出し角 | 0.5° |
平均打ち上げ角 | 16.0° |
最大の高さ | 46y |
落下角度 | 42° |
左右ブレ | 31y |
2023年に国内展開が決定したベンタスTRレッドで試打データを計測してみました。割と捕まるシャフトだと思いますが、結果的にはかなり意外なフェード弾道です。それでも平均キャリーが304yなのでフェードとしては割と飛んでいる方かなと思います。
バックスピン量も常に2000rpm付近を推移しますのでステルス2ドライバーが低スピンなことは間違い無いでしょう。
ステルス2とベンタスTRレッドの組み合わせでの最高飛距離はキャリーで307yでした。先端がやや柔らかいシャフトではありますが、打ち上げの角度は低めのままです。
ステルス2ドライバー9°×ベンタスTRブラック6S
ヘッドスピード | 52.8m/s |
ボールスピード | 75.9m/s |
平均キャリー | 308y |
平均トータル | 332y |
平均サイドスピン | 156rpmドロー |
平均バックスピン | 2125rpm |
平均打ち出し角 | -0.2° |
平均打ち上げ角 | 15.8° |
最大の高さ | 47y |
落下角度 | 43° |
左右ブレ | -13y |
ベンタスTRブラックでも組んでみました。ややピーキーなシャフトではありますが、そこまで激しい差は出ず落ち着いていると思います。平均キャリーは純正シャフトと同じ308yで、最高キャリーは312yでした。平均値こそ違えど、バックスピン量のボリュームゾーンに変化は見られません。
このシャフトとしては初速が出ているので、ステルス2ドライバーとベンタスTRブラックの相性は良さそうです。振れれば、の話ですが。
純正以上に弾道が低くなることもありませんので、悪くないと思います。
ステルス2ドライバー9°×ジアッタス6S
ヘッドスピード | 52.7m/s |
ボールスピード | 75.8m/s |
平均キャリー | 309y |
平均トータル | 334y |
平均サイドスピン | 217rpmドロー |
平均バックスピン | 1988rpm |
平均打ち出し角 | -0.8° |
平均打ち上げ角 | 15.4° |
最大の高さ | 44y |
落下角度 | 41° |
左右ブレ | -22y |
いつものことですが、ジアッタスと組んで試打データを取ってみました。ステルス2ドライバーとの組み合わせでは、方向のばらつきが目立っており、飛距離が出ていることを素直に褒められるわけではなさそうです。
最高飛距離はキャリー316yで、この時のバックスピン量は1992rpmです。ステルス2ドライバーはやはり低スピンなのは確実だと思いますが、それだけでなくあらゆるシャフトのスピン特性を打ち消してしまう可能性を秘めていると考えています。
ステルス2ドライバーのスピン特性並びにシャフトへの反応は、良い意味で捉えるならスピン量が多くて候補から外していたシャフトを選択肢に入れることが出来るという点にあります。悪く言えばどのシャフトもある程度の結果になるので選ぶのが難しくなるということでもあります。
ステルス2ドライバー9°×スピーダーNXグリーン6S
ヘッドスピード | 52.5m/s |
ボールスピード | 74.2m/s |
平均キャリー | 298y |
平均トータル | 321y |
平均サイドスピン | 196rpmフェード |
平均バックスピン | 2113rpm |
平均打ち出し角 | -1.6° |
平均打ち上げ角 | 15.4° |
最大の高さ | 44y |
落下角度 | 42° |
左右ブレ | 5y |
初速はやはりあまり高くならず同じシャフトを組んだステルス2プラスと比べても、低スピン&低弾道になりました。やはりステルス2ドライバーが低スピンなのはどのシャフトを組んでも現れるようです。
最高飛距離は299yで基本的にフェードなのでフェードとしては飛ばしやすい組み合わせだと思います。油断するとスライスするので試打が必要でしょう。
ステルス2ドライバー9°×ツアーAD CQ6S
ヘッドスピード | 52.9m/s |
ボールスピード | 76.0m/s |
平均キャリー | 303y |
平均トータル | 324y |
平均サイドスピン | 132rpmドロー |
平均バックスピン | 2352rpm |
平均打ち出し角 | -2.1° |
平均打ち上げ角 | 16.2° |
最大の高さ | 51y |
落下角度 | 45° |
左右ブレ | -21y |
唯一ステルス2ドライバーの初速を引き出せるのはツアーAD CQでした。スピード感のあるシャフトで、ヘッドを矯正する力も持っていますね。飛距離としても、常にキャリー300yを超えて、最高キャリーは305yでした。方向的には小さいサイドスピンでドローが多いです。
ただ、CQのレビューの時にも言ったようにフェードが突然出たりもするので一方向性を出すのが簡単というわけではありません。ヘッドスピードがそこまで速くない人の方がこう言ったシャフトとの組み合わせは相性が良いです。
ステルス2のもう一つの特徴である弾道の低さを緩和することにも成功しています。良くも悪くもステルス2を薄味にしていますがツアーAD CQが好きならありです。
ステルス2ドライバー9°×ツアー AD HD6S
ヘッドスピード | 51.7m/s |
ボールスピード | 74.9m/s |
平均キャリー | 297y |
平均トータル | 325y |
平均サイドスピン | 265rpmドロー |
平均バックスピン | 1882rpm |
平均打ち出し角 | -1.1° |
平均打ち上げ角 | 15.1° |
最大の高さ | 40y |
落下角度 | 38° |
左右ブレ | -27y |
ニュートラルなシャフトを組んでみると、ドローしました。やはりステルス2ドライバーはちょっと捕まると思います。様々なシャフトを組んでみましたが、フェードで気持ちよく振れて飛ぶセッティングは難しいです。
ツアーAD HDだと最大飛距離こそキャリー308yと伸びましたが、平均するとバックスピン量がばらつくのでステルス2ドライバーとの相性は良くないと感じました。
ステルス2ドライバーの良い点
私が考えるにステルス2ドライバーの良い点は以下の点です。
- スピン量が適正値に入りやすい
- 適度に捕まる
- ハードヒッターがメリットを受けやすい
- 吹かない
- カスタムの選択肢が多い
ステルス2ドライバーのイマイチな点
細かいことばかり書きますが、ステルス2の気になる点は以下の4点です。
- 前作から“進化した”点はない
- これでも弾道は低すぎる(ハード)
- 寛容性はSIM2ほどではない
- 形状的なデメリットが出る人がいる
形状的な難点
デザインのところでも少し触れましたがステルス2の最大のネックはイナーシャジェネレーター先端のウェイトの張り出しだと私は考えています。
私はアタックアングルがプラス3°〜5°でヒットしており、決して強いアッパーではありませんが、それでもこの部分を擦ります。後ろに長く伸びているヘッドではよく起こることですが、ステルス2のようにコンパクトなヘッドで起きてしまっているのは残念です。
実は打ち上げ角度が全体的に低くなっていた要因の一つがこれです。また、同じ動きによって、お尻が地面に跳ね返って急激にローテーションが進んでしまい引っかけが出るというのもまた事実。
ステルス2の打感
ステルス2は新モデルだから、ステルスのあの変な打感は改善されていると勝手に期待していた私が馬鹿でした。
打感も打音も極めてステルスであり、打っていて違いを感じることはほぼ不可能だと思います。艶ありのクラウンが印象を変えますが、打ってみれば「あぁまたこれか」という感嘆のため息が出ます。
また、打点を変えた時の反応も前作同様で、センター以外ではスピンの変化が大きく変な弾道が出てしまいます。この辺はセンターで当てれば良いので半分打つ人の責任ではありますが特殊な打点とヘッドの入れ方で飛ばしている人は上手く打てません。
ステルス2ドライバーのセッティング
ステルス2の位置はマトリックスチャートセンターの左下あたり、TS4の近くです。
そこまで強いドローバイアスではありません。イメージ的にはM6をすごく低スピンにしたような感じです。
ステルス2ドライバーに合うシャフトは割と多いです。右のエリアでも左のエリアでもある程度マッチしてくれますが、マトリックスチャート通りの結果になるとは限りません。また、ステルス2はスピン量を強制的に下げるヘッドでもあるので、マトリックスチャートの上下の関係は参考にしなくても良いかと思います。ただ最も低いゾーンのシャフトはハードになりすぎてスイングを崩すのでやめておきましょう。
データチャート
飛距離性能はこれまで同様に高いですが、歴代のモデルと比べて頭抜けるほどではありません。安定性ももちろん酷かった初代ステルスよりは良いですが、SIM2やSIM2 MAXと比べると心もとないです。“ステルス2といえばコレ!”という特別な才能を感じない平凡なドライバーだと思います。
総合評価
名前が変わらずに登場したモデルは高評価になりにくいジンクスがありますが、ステルス2ドライバーもそれに当てはまってしまう気がします。試打データが良いのは素晴らしいことだと思いますが、テーラーなら当たり前と思ってしまう歴代の功績があるのでもどかしいところです。
需要は間違いなくあるし、万人受けという面では割と上位に来ると思います。ただ、打感やデザインを含め前作の二番煎じ感が否めずイマイチインパクトがないモデルだと思います。
おススメ度 (3.5 / 5)
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