高慣性モーメントシリーズ
オノフには、アベレージ向けのAKA、ハードヒッターやスコアを重視するゴルファー向けのKUROの2つのモデルがメインです。それに加えて、前作で初登場のRD5900ドライバーは超高慣性モーメントモデルを展開。
これはAKAの派生モデルだったわけですが、2022年夏に登場するオノフラボスペックプラスプラスはこれの後継モデルです。コンセプトからしてかなり変更されましたので、その辺りも言及しながら解説していきたいと思います。


オノフラボスペックプラスドライバーのデザイン
ソールデザインは、後方にウェイトがある点は前作から継承しています。
そのウェイトの両端はリブのようになっていてこれはパワートレンチの一部みたいです。デザインとしてかっこいいので機能しているか否かはまぁどっちでも良いです。
クラウンはカーボンですが、塗装の仕上げは艶消しになりました。AKAはツヤありで、KUROがツヤなしなのでKUROを使っている私としては、締まって見えて好印象。
前方から見ると、昨今では逆に珍しくなりつつある超シャローバック。クラウン中央部ですら下り坂になっています。
クラウンのヒール側にLABOSPECの文字があります。
フェース形状はこのようにV字がややきつくなっています。ヘッドだけを置くとなんとなくトゥ側に傾いているように見えます。クラウンの形状自体がヒールに少し膨らんでいるのでやや驚きました。
ロフトは9.5°と10.5°の2種類が選択可能です。
試打データ
ラボスペックプラス10.5°×TATAKI60S
ヘッドスピード | 55.9m/s |
ボールスピード | 78.2m/s |
平均キャリー | 300y |
平均トータル | 320y |
平均サイドスピン | 148rpmドロー |
平均バックスピン | 2815rpm |
平均打ち出し角 | -0.6° |
平均打ち上げ角 | 15.7° |
最大の高さ | 55y |
落下角度 | 48° |
左右ブレ | -13y |
セッティングは、グリップ重量を7→12gにしてソールウェイトを6→3gに変更しています。スリーブはノーマルポジション。
平均初速が素晴らしいです。ロフトが立っているので初速が出やすいということはありますが、それを考慮して10.5°で試打をしているので実ロフト9.5°だとしても優秀。
バックスピン量はやや多く、2815rpmでした。これによって、初速の割には飛距離が伸びなかった印象です。サイドスピンは少ないです。最大飛距離はキャリーで302y、トータル321yです。
バックスピン量、サイドスピン量ともに安定していて突飛な数字は少ないです。
オノフラボスペックプラス10.5°(-1°ポジション)×TATAKI60S
ヘッドスピード | 54.8m/s |
ボールスピード | 77.2m/s |
平均キャリー | 306y |
平均トータル | 329y |
平均サイドスピン | 473rpmドロー |
平均バックスピン | 2181rpm |
平均打ち出し角 | 0.0° |
平均打ち上げ角 | 15.4° |
最大の高さ | 47y |
落下角度 | 43° |
左右ブレ | -35y |
今度はさらに飛距離を出すためのセッティングを試しました。ウェイトはグリップが7→12g、ソールは6→1gです。飛距離は無事に伸びて、最大でもキャリー309yでした。バックスピン量は1°立てただけで600rpmほど減ったので低スピンエリアに突入。
赤がこのセッティングでの弾道
サイドスピンはソールウェイトの影響か、多くなりました。打ち上げ角度は微減なので滞空時間が短くならなかったために飛距離が伸びたのでしょう。
試打したフィーリング
安定性の高さは、さほど魅力的ではありません。
高慣性モーメントドライバーの多くは捕まるモデルが多いですが、ラボスペックプラスも同様。しかし、引っかけが出ます。基本的にミスショットはトゥヒットなのですが、トゥヒットの時に引っかけだけでなくすっぽ抜けも出てしまうのが残念で仕方ありません。
飛距離性能は低くもないですが、KUROが飛ぶのでラボスペックプラスにする理由は特にありません。ロフトによる低スピンは、実感しやすい反面コントロールのしにくさを誘発しているので同じくらいのスピンレベルであるKUROとは違うタイプのドライバーです。
ロフトの秘密
オノフラボスペックプラスドライバーを構えると、明らかにロフトが変です。
そう、異常に立っているんです。まぁ測れば分かるので書いておきますが、ラボスペックプラスは10.5°のヘッドで、実ロフトは9.5°しかありません。9.5°のヘッドとなるともはやドラコンでもやるんかくらいのストロングロフト。
これによって、ロフト選びは大きめにすることをお勧めします。ラボスペックプラスドライバーにも、KUROやAKAと同じ可変スリーブが搭載されましたので、ロフトは±1°調整可能です。
打感
私が最初に驚いたのは、打感の良さです。
カーボンクラウンで、しかも高慣性モーメントの大きめなヘッドでありながら、カーボンのこもり音は少ないです。
全くキンキンしているわけではないのですが、KUROのようなハリのある破裂音に近い打音だと思います。打っている時に、艶消しのクラウンと相まってKUROを打っているのかと疑うほどです。
セッティングの難
ラボスペックプラスはオノフのドライバーの中でも最も調整幅が小さいモデルといえます。それゆえに、合わない場合の処置の施しようがないのが私としては評価を下げる要因になると考えています。
そして、シャフトチョイスに関してもかなり難しいものがあると思います。今回の試打データを見て分かる通り、TATAKI60でしか計測結果を残していません。これはつまりTATAKI以外が全く良い結果にならなかったということです。
私としては、高慣性モーメントのヘッドを毛嫌いもしていませんし、苦手意識もありません。しかしラボスペックプラスドライバーは、私には到底使いこなすことができません。理由を解説していきます。
ラボスペックプラスのソールウェイト
ソールウェイトが標準で6gなのですが、これを何gにしてもお尻の重さを強く感じました。これは同じく高慣性モーメントのG425MAXにも見られる特徴です。
私としてはお尻が下がりすぎてダフる、トップするなどの許し難いミスを誘発する点を指摘したいと思います。ラボスペックプラスは低スピン傾向のあるヘッドですから、この特性を欲しいユーザーにはハードヒッターや上級者も含まれるはずです。
しかしそういう人が打てば私と同じ感触を得る人が一定数いるであろうことは容易に予想できます。
ソール形状
ラボスペックプラスはKUROと比べるとヒール側にボリュームがあります。ただ、これを他社の高慣性モーメントモデルと比べてどうかというと決して大袈裟な形状ではありません。つまり普通なんですね。
ですが、レベルに達した瞬間に開くような動きが10球に1球ほどの頻度で確認されます。この時の弾道はいわゆる“トゥヒットのすっぽ抜け”で、OBしそうな曲がりはばの右ストレートです。
この感触の恐ろしいところは、トラウマになるということです。このヒットをした後にまともな弾道を打てるビジョンが完全に絶たれ、インサイドからヘッドを入れる勇気がなくなります。
シャフトの反応の悪さ
ラボスペックプラスドライバーは、どのシャフトを付けようがほとんど弾道やミスの傾向に変化がありません。今回はラボスペックTATAKI50、60、SHINARI50、60の他に、デラマックス07D6X、5X(46インチ長尺)、オートフレックスXX(柔らかいシャフト)、アッタスKING4R短尺などを試しましたが、どのシャフトでも同じように右へのすっぽ抜けとトゥヒットの引っかけがでます。
つまり、シャフトでどうにかすることができません。シャフトを変えて反応がないだけなら良いのですが、純正であるラボスペックのシャフトでうまく打てないので困ります。どんなシャフトでもヘッドのウェイトで何とか出来るKUROや、どんなシャフトにもある程度マッチしてくれるAKAと比べると微妙な仕上がりと言うしかありません。
データチャート
ドライバーの要である飛距離性能については高評価。一方で、このドライバーが本来同社の他モデルと差別化を図るであろう安定性は低評価です。
スピン量については、単純に試打データ的良さは評価しますが、安定しないのでそこでやや減点です。


総合評価
期待していたモデルだけにガッカリしました。高初速であること以外に絶対的な利点が少ないです。まぁKUROとAKAで盤石なラインナップなので、冒険したのだとは思いますが、結果的に打ちにくいので意味がないと思います。
安定性を損ったのは、RD5900よりも慣性モーメントが低いからではなく総合的な仕上げの問題。それが、私のセッティング術でもどうにも出来なかったことは大変悔しいですが、おすすめすることは困難です。
おススメ度 (1.5 / 5)
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